Yarakuzen
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2023 年 12月 18 日

逆翻訳のやり方は?目的と効果、活用法を事例で解説

逆翻訳

本記事では、逆翻訳とは何なのか、その目的や方法、効果をご紹介します。具体的には、翻訳案件のフローに組み込まれる人手による逆翻訳について説明し、後半では日々外国語を使って仕事をしているビジネスパーソンにも役に立つ、自動翻訳を利用した逆翻訳の活用法を例を用いて説明します。

 

【目次】

 

「逆翻訳」とは

皆さんは逆翻訳と聞くと、何を思い浮かべますか?

最近はSNSで面白コンテンツとして逆翻訳という言葉が用いられていることもあり、言葉自体を聞いたことがない人は減ってきているのではないかと思います。

翻訳業務において用いられる「逆翻訳(折り返し翻訳/バックトランスレーション)」とは、一度翻訳した言葉をもう一度元の言語に翻訳することを指します。具体的には、日英翻訳の場合であれば、日本語から英語に翻訳した文を、元の日本語文を見ずに英語に翻訳する作業です。

 

逆翻訳の目的と適性

逆翻訳は、翻訳文の正確性を確認するために用いられる手法です。特に医学や薬学、特許など、専門用語が多く、原文の情報が過不足なく訳文に反映されることが最重要事項となるような分野でしばしば用いられるようです。このような分野の翻訳では、1つの誤訳が健康被害、経済的損失、社会的な評価の毀損など重大な問題を引き起こす可能性があるため、逆翻訳に費用や工数を割いて正確性(※)を検証することが有用な手段となるのです。

※「正確性」の定義についてはこちらの記事をご参照ください。

しかし、逆翻訳が向かない文書もあります。正確性よりも訳文の美しさや効果が期待されるようなタイプの翻訳(※)では、字義通りの意味から大きく離れた訳文になることがよくあるので、逆翻訳の過程を重ねるとかえってややこしくなる可能性があります。このようなタイプの文書の例としては、文学やゲーム、劇、詩、広告、演説などが挙げられます。

*文書タイプについてはこちらの記事をご参照ください。


逆翻訳の実例

では、逆翻訳の工程を経ることでどのようにしてミスを発見できるのか、実例を挙げて説明します。翻訳プラットフォーム「ヤラクゼン」のユーザーガイドから一文を取ってきました。英語は読める方が多いと思うので、あえてスペイン語翻訳を想定して逆翻訳の過程を体験してもらいたいと思います。

原文
自動翻訳は人の名前や会社名などの固有名詞を間違えることが多いので、用語を登録することで誤訳や表記ゆれを防ぎます。

社内外国人スタッフが訳してくれたスペイン語文が以下であると仮定しましょう。

訳文
Las traducciones automáticas suelen cometer errores en nombres propios, como nombres de personas y de empresas, por lo que el registro de términos evita malas traducciones y errores ortográficos.

スペイン語がきちんと読める方でなければ、正しく訳せているかどうかが分からないですよね。こちらをもう一度、最初に翻訳した人とは別の人に頼んで日本語に翻訳してもらいます。

逆翻訳を行った日本語文
機械翻訳では人名や会社名などの固有名詞に誤りが生じることが多いため、用語を登録しておくことで誤訳やスペルミスを回避できます。

文末、元の文で「表記ゆれ」としていた部分が「スペルミス」となってしまっています。表記のゆれとスペルミスは別ものなので、この訳文には間違いが含まれる可能性があることが分かりました。逆翻訳の過程では、このような、原文と逆翻訳後の訳文の違いをレポートにまとめます。チェックの過程を重ねることで、ミスの見逃しを減らしたり、外国語に堪能でなくても正確性に疑いのある箇所を指摘できるのが逆翻訳という工程です。

 

日々の翻訳業務に逆翻訳を取り入れてみる

冒頭で、逆翻訳は特許や医学、薬学などの専門性が高い分野でしばしば用いられると書きました。しかし、訳文を元の言語に訳しなおすという過程自体は、上記のような分野の翻訳に限らず、日々多言語能力を活かして仕事をしているビジネスパーソンたちにとっても非常に便利な手法になり得ます。ここからは、専門性の高い分野に限らずもう少し広くビジネスシーン全般に活用できそうな逆翻訳のやり方とその有用性を説明してみたいと思います。


ヤラクゼン上の「逆翻訳」機能

翻訳プラットフォーム「ヤラクゼン」には逆翻訳機能が搭載されています。ここからご紹介するのは、上記で説明した翻訳業務のフローに有償で組み込まれる人手による逆翻訳とは異なり、自動翻訳を使用した逆翻訳作業になります。

逆翻訳機能を活用して訳文の表現を模索する

例として、とあるインタビュー記事から一文を取り上げてみましょう。左側の日本語が原文、右側の英語が訳文です。翻訳にはDeepLを使用しました。

(※ファイル翻訳)

さすがDeepL、原文の意味はきちんと反映されているかのように思われます。しかし、逆翻訳アイコンをクリックして訳文を見てみると…

 

逆翻訳をした後の日本語の後半をじっくり読んでみてください。すこし違和感がありませんか?元の文には、「会社は日々活動を広げるもの」「その活動は記録して報告すべきもの」「私はその一連の流れを担っている」という3つの情報があります。

しかし、逆翻訳後の日本語文では、「記録と報告」が「出来事」を修飾する形になり、会社が日々の活動を記録し報告しなければならないという情報の重要性が薄れてしまっています。どうやら、「sequence of events」をthat節で修飾する形だと、原文のニュアンスが損なわれてしまっているようです。英訳文のカンマより後ろを少しいじってみましょう。

 

「The company expands its activities on a daily basis, and must record and report them, and I am responsible for the flow of this process.」これで、元の日本語とほとんど変わらない意味合いになったと思います。

日々どれだけ英語に触れていても、他の業務や時間的な制約もある中で微妙なニュアンスまで反映できているかまですべて漏れなく確認していくのは厳しい場合もあると思います。そんな時に、ヤラクゼンでは逆翻訳ボタンをワンクリックするだけで気づきのきっかけが得られるので、手軽かつスピーディに訳文をブラッシュアップしていくことができます。ぜひ今後の翻訳業務に活用してみてください。


自動翻訳を利用した逆翻訳 vs 人手による逆翻訳

前半でご紹介した人手による逆翻訳と、後半でご紹介した自動翻訳を利用した逆翻訳のメリットとデメリットをご紹介します。

自動翻訳を利用した逆翻訳のメリット

  1. 人手がいらない
  2. コストがほぼかからない
  3. 語学学習につながる


まずは当然ですが、人手が必要ないので、工数や費用はかかりません(※)。また、翻訳業務を担う本人が逆翻訳をしながら訳文に磨きをかけていく過程で、その人の言語そのものへの気づきが増え、語学学習にもつながる可能性があると言えるでしょう。

※無料の自動翻訳エンジンを使うと、翻訳エンジンの精度向上のためデータが二次利用される可能性があるので、社外秘の文書や機密情報が含まれる文書を翻訳する際は有料ツールを使うようにしましょう(参考:DeepL翻訳のPro(有料版)と無料版はどう違う?翻訳精度について。https://www.yarakuzen.com/news/pro_free_differe )。


自動翻訳を利用した逆翻訳のデメリット

  1. 正確性に欠ける可能性がある
  2. ユーザー側にもある程度の語学・自動翻訳に関する知識が必要


人手翻訳と自動翻訳を比較して、後者の訳文により注意が必要なことは言うまでもありません。自動翻訳はあくまで機械なので、誤訳がある可能性を常に念頭に置いて、逆翻訳後の文に違和感があった場合は必ず原文と訳文の両方を確認するようにしましょう。ということは、自動翻訳を利用して逆翻訳の恩恵を得るには、ユーザーにもある程度(指摘されたらニュアンスの違いが理解できる程度)の語学力が必要になります。また、自動翻訳エンジン無料版のリスクや自動翻訳が起こしやすい誤訳など、「自動翻訳リテラシー」も持ち合わせていることが望ましいです(※)。

※参考図書:『自動翻訳大全 終わらない英語の仕事が5分で片づく超英語術  (ENGLISH HACKER'S HANDBOOK)』三才ブックス

 

おわりに—逆翻訳は色々な場面で活躍する!

翻訳案件のフローに組み込まれる逆翻訳の概要とやり方、自動翻訳を利用した逆翻訳のやり方と有用性をご紹介しました。正確性が最重要事項となるような文書であれば人手の逆翻訳依頼を検討してみてください。また、翻訳業務を担っている多言語話者の皆さんは、ぜひ自動翻訳を利用した逆翻訳を日々の業務に取り入れてみてください。

いずれにせよ、本記事を読んでくださったあなたが、翻訳のことを少しでも解像度高く見られるようになっていれば嬉しいです。

WriterTeam

この記事の執筆者:Yaraku ライティングチーム

翻訳者や自動翻訳研究者、マーケターなどの多種多様な専門分野を持つライターで構成されています。各自の得意分野を「翻訳」のテーマの中に混ぜ合わせ、有益な情報発信に努めています。