Yarakuzen
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2015 年 4月 01 日

【コラム】M&Aに立ちはだかる「言葉の壁」

こんにちは、八楽の森谷です。

昨日ニュースで見たのですが、日本取引所グループ(JPX)がIPO(新規株式公開)案件で不適切な事案が相次いでいる問題に関し、対応策を正式に発表したみたいですね。
上場審査を強化して、IPO企業に対して業績予想の前提条件や根拠の適切な開示を要請するとのこと。
証券会社・監査法人の責任についても触れていました。
われわれのようなベンチャー企業にとっては非常に動向が気になるところです。

さて、めずらしく堅い話から入ったわけですが、今日のテーマも若干堅めの「PMIについて」です。
『PMIって何?』という方も是非ご一読ください。

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PMIにあたっての「言葉の壁」

 

PMIとは、Post Merger Integrationの略で、M&Aが成立した後の統合プロセスのことを指します。
M&Aは、企業としてのさらなる向上を見込んで、他社を買収、あるいは全く違う企業同士が合併することです。
しかし、違う企業同士を一つにするに当たっては、マネジメントの方向性やさまざまな仕組みの違いなど、あらゆる場面で生じるギャップを調整しなくてはなりません。どちらかのやり方に合わせたり、新たな方法を構築したりすることで、経営統合の効果を確実に発揮させるようにすることが重要です。
このような調整のプロセスのことをPMIと言います。つまり、PMIをうまくやるかどうかによって、M&Aを行う以前に想定されていた、もしくはそれ以上のメリットを得られるかどうかが決まるのです。
逆に言えば、PMIがうまくいかない場合、そのM&Aは失敗だったとみなされる可能性があります。

M&Aで生じたのれんの大規模な減損がニュースで取り上げられることがありますが、これはPMIが当初の想定通りには進まなかった例と言えましょう。
日本企業同士でも前述のような問題が発生し、統合のプロセスは非常に困難なのですが、これが国をまたぐとなればなおさらです。

日本企業が海外企業と合併した場合、まずは経営権をどのようにするかが重要な問題となります。
具体的には、日本の企業がすべてを統括するリーダーとなる、海外本社と日本本社を切り離す、今までと経営体制は変わらないままで提携状態だけを保っていくなどといった様々パターンが考えられます。
まずはこの経営方針をはっきりさせ、ビジョンを明確にすることが重要になると言えるでしょう。
また、企業風土の違いも問題点の一つです。日本では一般的な習慣であっても、海外企業では認められないものも多くあります。
日本企業と欧米企業が合併する時ももちろんですが、同じアジアの国の企業同士が合併したとしても国によって企業風土は千差万別です。
特に中国は身近な国であり今後も両国合弁のビジネスは増えていくと思いますが、法制度、ビジネスマナー等が大きく異なりますので事前に入念なリサーチが必要です。
当たり前のことですが、日本人の働き方や企業文化が全くもって「グローバルスタンダード」でないことを認識し、相手に押し付けないことが大切です。
例えば、懇親会などの席で年齢を聞いただけでセクハラだと告訴されることすらあり得ます。
また日本人の「お客様は神様です」的な考え方は、台湾など一部のアジアの国では通じますが、欧州特に北欧では全く理解されないことが多いです。
0d8ee6c371902d77196ab3bc4c976bd8_m しかし、一般的な日本企業にとって海外企業とのM&Aにおいて一番の問題となるのは、やはり言葉の壁でしょう。
日本人は義務教育で英語を習ってきているとはいえ、実戦向きではない英語ばかりを学んでいるため、突然英語を話せと言われても話すことができないという方がほとんどです。また、ビジネスシーンでは専門用語も必要ですし、ちょっとしたニュアンスの違いで生まれた誤解が大きなトラブルにつながることがあるかもしれません。
言葉の壁の対策としては、英語に精通する社員、通訳者などを雇用すること、あるいはなんらかのツールを導入することが考えられます。また、長期的なビジョンとして、楽天などで話題になりましたが、社内の公用語を英語にすることなども有効な対応策になるでしょう。

もちろん、相手企業に対して日本語のレクチャーをしていくのも良いかもしれません。早急にグローバル化を図ろうと考えるならば、中途採用や新卒採用などで留学生を雇用し、多言語化していくというのも一つの手法かと思います。社員が多国籍化していけば、自ずと企業文化の違いへの対応も柔軟になると言えるのではないでしょうか。


いかがでしたでしょうか。
「自分の考え方を他の人に強制しない」など言われれば当たり前のことばかりなのですが、実際にビジネスの現場で自分が担当となるとやってしまいがちなことかと思います。

今後、規模に関わらず間違いなく国をまたいだ合併や協業は増えていくと思われます。
八楽としては、そういった企業のために粛々とシステム開発に取り組んでいきたいと思います。